指導者・選手のための医科学ガイド

こんにちは。スポーツ医科学委員会の有賀です。
第二弾は、障害予防における適切な練習時間・内容についてです。
近年、野球でも投球制限が設けられる等、いわゆる「使いすぎ」を減らす取り組みが進んでいます。
バスケットボールでもオーバーユース(体の一定箇所を使いすぎる)、オーバーワーク(練習をし過ぎる)という知識を持つことは障害予防に大事です。
それぞれの年代で着目点が変わってくるため、年代別での解説をしていきます。
今回は、ミニバス(小学生)に焦点をあてていきます。
目次:
1.小学生に適切な練習時間とは
2.ミニバスで多いオーバーユース障害
3.PHV前後を意識した練習の考え方
① ミニバス(小学生)編
- 小学生に適切な練習時間とは
小学生期では、DiFiori(2014)やBrenner(2016)によると「年齢(歳)≦ 週の練習時間(時間)」を超えないことや、週に最低2日は完全休養日を設けることが重要と言われています。(※あくまで医学的な見解になります。)
この時期は「体をつくる時期」であり、勝利や結果よりも運動を楽しむこと・多様な動きを経験することが最優先となります。
以前、私の調査では高学年に対し、週に4回の練習を行っているチームが多かったという結果でした。この結果だけ見ると安全な範囲と考えられますが、クラブチームとの併用や一回の練習時間が長くなると前述したように障害の危険性が上がることが予測されます。

- ミニバスで多いオーバーユース障害
小学生では以下のような成長期特有の障害が多くみられます。
- 踵骨骨端症(シーバー病)
→踵の後ろの痛みを訴えたら要注意
- オスグッド病
→脛(スネ)の痛みを訴えたら要注意
- 足関節・膝関節の慢性痛
これらは練習量の過多・休息不足が大きな要因です。
「少し痛いけどできる」は悪化のサインであり、早期対応が不可欠です。
- PHV前後を意識した練習の考え方
小学生後半からは、身長が急に伸び始めるPHV(Peak Height Velocity)前後に入る選手もいます。
この時期は、骨の成長 > 筋力・柔軟となり
・動きがぎこちなくなる
・転倒や捻挫が増える
といった特徴があるので障害に注意が必要です。

しかし近年、たった約10分のウォームアップでケガを減らせる可能性があるという研究が報告されています。
この研究は、カナダの研究チームが行ったもので、11〜18歳のバスケットボール選手を対象に調査されました。
約800人の選手を対象に、
・普通のウォームアップを行うチーム
・特別なウォームアップを行うチーム
を比較しました。
その結果、特別なウォームアップを行ったチームでは、足首や膝のケガが約36%減少しました。
この研究で使われたのはSHRed Injuries Basketball Programというプログラムです。
特徴はとてもシンプルです。
時間:たった約10分で内容は次の4つです。
① ランニング
② バランス運動
③ 筋力トレーニング
④ ジャンプ・方向転換
これらを練習することで体の使い方を上手にするトレーニングです。
これによって
・足首の捻挫
・膝のケガ
を減らせる可能性があります。
また、不安や集中力の低下が障害と関連するとも言われているため、ウォーミングアップの時間を使って集中力を高めるのも良いかと考えられます。
指導者の皆様は、選手たちが飽きないよう色々な工夫をされると思いますが、
例)
・鬼ごっこ、ジャンプ、バランス遊び
・体幹・股関節まわりの軽い筋力トレーニング
・ストレッチを「遊び感覚」で取り入れる
といった形で応用するのも良いかもしれません。

練習場所の確保や時間が調整しにくい点からも、学年を分けて練習が難しい部分もあると思います。
レベルの差や成長過程の差を考慮した練習メニューを考えるのは大変だと思いますが、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
次回は、中学生編です!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ミニバス(小学生)編:参考文献
練習時間・オーバーユース・休養に関する総論
- Brenner JS. (2016)
Overuse injuries, overtraining, and burnout in youth sports.
Pediatrics
▶ https://publications.aap.org/pediatrics/article/138/3/e20162102/52684 - DiFiori JP et al. (2014)
Overuse injuries and burnout in youth sports: A position statement.
British Journal of Sports Medicine
▶ https://bjsm.bmj.com/content/48/4/287 - American Academy of Pediatrics (AAP)
Sports Specialization and Intensive Training in Young Athletes.
▶ https://publications.aap.org/pediatrics/article/138/3/e20162148/52685 - Andersen, M. B., & Williams, J. M. (1988).
A model of stress and athletic injury: Prediction and prevention. Journal of Sport and Exercise Psychology, 10(3), 294–306. - Xu, E., Greif, D. N., Castle, P., & Lander, S. (2025).
Pediatric sports: The mental health and psychological impact of sport and injury.
Journal of Clinical Medicine, 14(12), 4321.
成長期障害(オスグッド・シーバー病など)・運動の提案
- Malina RM et al. (2004)
Growth and maturation of young athletes.
Sports Medicine
▶ https://link.springer.com/article/10.2165/00007256-200434050-00001 - Caine D et al. (2006)
Injuries in children’s and youth sports.
Sports Medicine
▶ https://link.springer.com/article/10.2165/00007256-200636020-00002 - Carolyn A. Emery, Owoeye OBA, Räisänen AM, et al.
The “SHRed Injuries Basketball” Neuromuscular Training Warm-up Program Reduces Ankle and Knee Injury Rates by 36% in Youth Basketball.
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2022;52(1):40-48.





